主婦をしながら漫画・イラスト制作してます。常夏さわやのブログ

映画「バーニング」感想文

 
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常夏さわや(tokonatsu sawaya) 1981年神戸市生まれ 現在埼玉県川口市で夫と二人暮らし。  まんが、イラストの受注製作をしています。

「バーニング」って映画を観ました。

夫がNHKで放映していたのを録画していて90分だし短いからって見たら

はぁ?って思うような終わり方で

伏線と思えるような思わせぶりな何かがいっぱいあって何も回収されてなくて

全然意味がわからないよーーーって嘆きました。が

実は劇場版はもっと長くて148分もあるという。

あちこちのレビューを読んでみてこれは劇場版を見なければ!とTUTAYAに行って借りてきました。

正直悔しい。意味不明の映画なのにイライラしたのに駄作かもしれないのに

90分も見ながらまた純新作で借りてきてしまう。

こういう「気になる」ってお金を使わせる程の魅力になるのね、と思いました。

90分版「バーニング」は

何の話か分からないまま進んでいっていつの間にかミステリーが発生していて

このミステリーの発生の仕方が実にお見事で自然なのです。

主人公は部外者で「オレ、知らん」と言ってしまえばそれで済むポジションにいるのですが

主人公は気にしてる。どうにもならないくらい気にしてて彷徨ってばかりいる。

そしてミステリーの真相が分からないまま謎なまま終わっている。

見ている方も主人公と同じ気持ちにさせられます(;・∀・)ヒー

 

主人公は朴訥でパッとしない青年でとくにカッコいいところはないのです。

しかし善良と言うかイイヤツで 彼が事件を気にして止まないことろがイイヤツだからこそなのです。

最後まで何も真相が解き明かされないのかも、と思いつつ148分劇場版を最初から見ました。

どちらとも日本語吹き替えで見たのですが声優とセリフが違っていました。

90分版の方が声優に演技力がありました(ベンさんがコッテリした物言いをしている)

でも「ハウス」を「ビニールハウス」というように148分版の方が丁寧に喋っていて分かりやすかったです。

90分版は最初から少しづつシーンを削っていたのだな、と分かりました。

148分版の方が全てがいい流れで見やすかったです。

余計なストレスがない感じ。90分版は多少しんどい映画に思えましたが148分版は楽しく見れました。

そして90分版ってやっぱりTVで誰でも見れてしまうからか配慮?してて

おっぱいが見えにくくなっていたり、麻薬を吸うシーンを削っていたりしてました。

やっぱりタダ見はアカンのですね。

 

148分版にはやっぱり90分版とはちがう終わり方になっていました。

私、すごく納得しました。

これでええんや!と思いました。

監督に拍手を送りたいです。

この物語がなんだったのか。このラストならすべて納得です。

主人公が主人公なわけがすごく分かります。

カッコいい所のない純朴青年がここまで追い詰められてしまった。

(彼自身は追い詰めているつもりだったと思う)

人が変わる様を見事に描いていたと思います。

彼を取り巻く孤独な環境、やるせなさ、理不尽、不可解な恋敵

消えた彼女

全てがイライラする。

セリフが少なくて主人公も表情が乏しくて 説明はほとんどないです。

でもヒントの様な符号があちこちに散らばっていて

決め手はなく散らばっていてイライラします。

彼女が消えたのがミステリーなんですがそこが主題じゃなくて

現代社会に起こりそうな悲劇を描いた感じがします。

 

いつもニコニコしているベンさんやその友人知人がめっちゃイラつくのですが

彼等ばかりがイラつくわけではないな、と

ストーリー的に何の意味があって出てくるのか分からない主人公の父や母

主人公が受けるバイトの面接の非人間的扱い。

ウソかマコトか分からない彼女の言葉の数々。

ウソかマコトか分からないべんさんの趣味の話。

すべてがイライラします。

主人公は大学まで出てるのにキチンとした就職をしてない様子。

主人公の父も酪農しながら息子を大学に行かせた父なのに

なんでこんな事に?って思ってしまう。

でも何かこの時代の中では仕方がなかったのかな?と思ってしまう。

 

最初は女の子の方からこんなに積極的に誘うなんて考えられない!とか思ってみてたのですが

彼女は主人公の事 7歳のころからずっと好きだったのかな?と

そう思うとけっこう可愛い。

主人公も中学の時ひそかに好きだったのかな?と

大人になってからも一線越えてからもお互いの関係が曖昧で

ちゃんとお互い好きであることを確信していられたらもっと違っただろうな~と

ベンさんに彼女を送らせたりしないで自分と一緒に居るように引き止めていたなら・・・

そんなシーンがいっぱいある。

この2人はこんな風にチャンスを逃し逃し来て

情念ばかり募っていたんだろうな~~って切ないやら悔しいやら

こういう事ってホントにありそうって思ってしまいます。

この2人の不器用さ自信の無さがなんかもうっ くう~~ってなって 心に残ってしまいます。

 

因みに私は彼女は総てホントの事を言っていたのだと思います。

猫もあの部屋で飼っていたのだと思います。

ベンさんの家に居たのは彼女の猫なのだと思います。

ベンさんは実は麻薬の売人で遊んでいるようでいて営業しているのだと思います。

ベンさんの言っている「ボロのビニールハウス」は比喩でホントは孤独な女の子の事なんだと思います。

 

カメラワークがすごく良かったです。

車の運転席を映してその窓に行き先の空が映っていたり

彼女の住んでいたアパートから絵の様な風景が映っていたり

多くの情報を詩的に伝えてくれます。

ソウルから車で少し行った所にある主人公と彼女の故郷

北朝鮮からの音声がずっと流れている農村地帯。

素朴な農村地帯と彼女の住んでた街ソウルとベンさんの住む高級住宅街

時に郊外の空港や山の中のダムやらあちこちを主人公は車や電車に乗って彷徨う。

夏から雪の降る季節まで美しい映像で孤独や不安が彩られていました。

もうこの映像美だけで見る価値が十分あります。

夕日や朝日が特にキレイ。

DVDのメイキングをみてたらかなり気合を入れて手間暇かけて本物を撮影していました。

この映画は良い映画です。ぜひ90分版ではなく148分版を見ましょう。

 

 

 

 

 

 

 

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