主婦をしながら漫画・イラスト制作してます。常夏さわやのブログ

「井戸川裁判」の傍聴に行ってきました

 
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常夏さわや(tokonatsu sawaya) 1981年神戸市生まれ 現在埼玉県川口市で夫と二人暮らし。  まんが、イラストの受注製作をしています。

裁判に行く理由

 

会報誌に漫画を載せてもらってお世話になっている
「井戸川裁判」の口頭弁論が11月10日に東京地方裁判所でありました。
今年の最後の回になるので行ってみようと思っていました。
ちょど前日に「井戸川裁判を支える会」から案内のハガキが届いたので
同日に行われる街宣も報告集会も参加することにしました。
何もかも全部初めての体験です。

井戸川裁判は福島原発のある双葉町の町長だった井戸川克隆氏が
国と東電の罪を訴えている裁判です。

 

地裁正門前街宣

 

比較的気温の高い秋晴れの朝9時25分、地下鉄の穴からでたら
東京地方裁判所正門前には沢山の人がいました。
色んな裁判の関係者さんが集まっていてビラを配ったりして
道の両側に訴えを書いたダンボール看板が何枚も連なっていました。
その一団を抜けた先にまた人が集まっていて緑の旗が立っていて
人の集まりの中に井戸川克隆氏が居たのです。

わ~~~本物の井戸川さんだ~~~(○≧∇≦)⊃゚・*:.。.

今まで写真や動画でしか見たことがなかったので心の中で盛り上がりました。
井戸川氏は集まった人々に挨拶をしていました。

「井戸川裁判を支える会」の共同代表の木村結氏も居られて
裁判の傍聴と入場の流れを説明をしてくれました。
以前は30人だったけれど今回は50人入れるようになった。
記事を書かないメディアの人にどいてもらったと。
傍聴を希望する国民の権利を守ってほしいと交渉した。
傍聴する人は面倒がらないでSNSなどで世間に伝えて欲しいと。
言っておられました。
その場にはちょうど50人くらいが集まっていましたが
定員オーバーの場合は抽選になるとのことでした。

関係者の話の後、集まった人の中からなにか話したい人どうぞ。となって
一人の男性が前に出て子供の甲状腺被ばくの話をされました。

 

口頭弁論

裁判所に入る

時間になり正門内に入って良い事となって
入っていったらアプローチ(前庭)で係りの人に整理券を手渡され
入口横の廊下で4列くらいで並ばされました。
数分間並んで待つと
列の前のホワイトボードに抽選結果が貼り出され
列が前へ進んで行きました。
列の先では係りの人が大きな声で整理券を読み上げて
隣の係りの人が手元のメモの番号を消していき
その先で係りの人に整理券を回収されて
ようやく裁判所の中に入れました。

 

入ったら空港みたいな手荷物検査があって荷物をカゴに入れて
自分は金属探知機?の門を通って荷物をうけとりロビーに入り

あとは自由

(´・ω・) エート・・・
10時30分の開廷まで10分くらいありました。
並んでいた時に列の中に居た人について行って口頭弁論の法廷を確認し
ロビーのソファでちょっとメモを書いたりトイレに行ったりして
時間ギリギリに法廷に入りました。

やたら天井の高い部屋で満席でみんな静かに座っていて異様でした。
私が座ったらすぐに時間となり開廷しました。

パワポ・プレゼン

裁判官の席の後ろにある壁が
壁じゃなくてドアになっていてパカッと開いて
3人の裁判官が正面から出てきました。
そこから出てくるの?ってビックリ(;゚Д゚)!
その場にいる全ての人が立ち上がり、ペコッと礼をして着席しました。

初老の男性裁判長が朗らかな声でみんなにマスク着用をお願いして
マスクが無かったら用意しているから言ってください~と話して
それではプレゼンを始めてください。と

井戸川氏がプレゼンを始めさせていただきます。と言って
照明がうっすらと暗くなりパワーポイントが壁に映写され
部屋の天井の高さが活かされていました。
被告席は誰も立たずに空いていて
井戸川氏は原告席で座って話していました。
パワーポイントの映写が主役でした。

要点をピックアップするというより字幕としてのパワーポイントであり
文字がズラーと映し出されているのを井戸川氏が読み上げていくのでした。
ただ口で言うだけよりは言葉がハッキリして良かったと思いましたが
普通のプレゼン資料としてのパワーポイントとは違うのでした。
私はメモをしようとしていたのですが書くのが追いつかなくなったので
途中からメモを諦めて聴くことに専念しました。

東電は当時の知見や情報収集義務から
東日本大震災級の地震、津波を想定することができた。
そして事故を起こさないような処置をとることができた。
防潮堤を作ったり建屋の水蜜化や重要危機室の水蜜化や高所化が可能だった。
たとえ事故が起こっても地域住民を被爆から守れた。
できたはずの処置をできないとしてやらずに事故を起こして
多くの人を被爆させた。という内容です。

パワーポイントは90枚近くあり、1時間ほどで読み終わったと思ったら
裁判官が次回の日程を発表して今回は終わりになりました。

裁判官のサラッとした進行にこういうものなの?と思いながら
他の方々と一緒に私もゾロゾロと法廷を出て行きました。
被告側にいたのは会社員ぽい30歳前後の若い人ばかりでした。

 

報告集会

参議院会館

次は報告集会に参加しようと思っていたら
会場である参議院会館が分からず
一旦地下鉄の駅に降りて駅員さんに道を聞いて地上に上がり
1kmほど歩きました。
大きな建物ばかりある中、道は広く
空が青くてイチョウ並木で道に黄色の葉が敷かれていて
いい散歩になりました。

途中で衆議院会館の前を通ると「憲法を守れー」と熱く訴える集団がいました。
ちょっと嬉しかったです。

参議院会館はまた入口で手荷物検査と金属探知機を経てロビーに入ると
「井戸川裁判を支える会」の人が居て首からかける入館証を渡してくれました。
駅の改札口のような入館ゲートで入館証のバーコードをピッとやって奥に行くと
空港みたいな電光板に部屋の予約表が映し出されていました。
いつもは小宮山泰子衆議院議員に部屋をとってもらって
衆議院会館で報告会をしているそうですが今回は選挙のこともあり
舩後靖彦参議院議員に部屋をとってもらって参議委員会館になったそうです。
報告会会場は100人くらい入れそうな広い部屋でまばらに人がやってきて
開始時刻の13時には40人くらい入っていました。

木村氏の話

最初に会の共同代表の木村氏がマイクを持ってお話をしてくれました。
傍聴席の抽選に3人ハズレが出て木村氏は傍聴席に入れなかったそうです。
ハズレってホントにあったんだ~と思いました。定員オーバーだったのですね。
そして朝の街宣でも言っていたこと、傍聴人が発信者になるのだと
日本の裁判はほぼ密室で行われ余程のことがない限りマスコミに報道されないから
傍聴人は当事者のつもりで発信して。と念を押されました。
あと海外ドラマの話から海外の裁判と報道について話してくれてました。

 

古川氏の話

 

次に古川弁護士がマイクを持ち
井戸川裁判も5年目で主張は一周したと
たくさん配布された資料と共に口頭弁論の補足説明をしてくれました。

国は東電の責任を問うと自分の責任も問うことになるので何としても罪を認めようとしない。
そして原発事故のあったところに中間貯蔵庫を作るから「公共事業」でヨシとしている。
例えば一般人が火事で近所を住めなくしたら
「公共事業」ということで許されないでしょう?と
ホンマに(´д`)

 

井戸川氏の話

休憩を挟んでから井戸川氏がマイクを持って話をしました。
最初に口頭弁論のパワーポイントは
直して直して直しまくって古川弁護士が連日徹夜になってしまったと
現場を知らない古川弁護士のために井戸川氏が山程資料を渡して
古川弁護士は猛烈に勉強して煮詰めてくれたと言っていました。

そして「偽装された原発事故対応を暴く!!」と題された紙の資料が配布されて
パワーポイントも映写されました。さきほどと違い、読み上げではなく
普通のプレゼン形式で写真を見せながらゆっくりと話すという形で
とても分かりやすかったです。

「歴史に学ばず風評に学ぶ日本人
「皆が」という同調圧力に従う。
ロンゲラップ島民の悲劇に学べ!!

最初に力強い言葉から始まり
「消すことができない歴史から学ぶ」と
福島県原子力防災訓練の記録の紹介が始まりました。

福島県と原発近くの6町
(広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町)が合同で主催して
1983年から2010年までに20回も防災訓練が行われていた。
これはプロも入ったかなり真剣な訓練で
地域ぐるみで保育所から中学校、病院も警察も会場となっていた。

原子力災害時には緊急事態対策拠点(オフサイトセンター)を立ち上げて
国、地方自治体、原子力事業者などが集まることになっていた。
そのための連絡や招集の訓練していたのに
現地対策本部と国がともに対策本部となるはずだったのに
実際の3.11の時にはこの参集は無く
国と総理大臣を本部長とする原子力災害対策本部が出てきて
原発立地帯の町長の居ない場所で物事が決定されていった。

配布資料には防災訓練の際のやることがたくさん書いてあり
防災訓練のチラシでは

避難は相当の放射線を受ける事になる
と予測される場合に実施される対策です。
放射性物質による放射線を避けるために、
放射線の影響がない地域に一時的に遠ざかります。

と書いてある。
これを見たら井戸川氏が3.11の時に情報のない中
一人でいち早く判断して町民を埼玉に避難させたことは
全くもって正しかったと言えます。

しかし福島県知事の佐藤雄平氏は県民を県外に逃がすことを嫌がり
福島県民は県外に逃れた人と県内に留まった人とで分断された。

井戸川氏は必要に迫られて避難したのだから
「自主避難」という言葉は使っちゃういけない。と言います。
訓練のときには「自主避難」などという言葉は無かったのです。

地元の新聞「福島民報」では訓練の様子は取材して記事にしているのに
3.11で訓練通りに行われなかったことを記事にしなかった。

井戸川氏が浪江支局長に「どうして本当のことを書かないのか?」ときくと
「企業ですから」という答えが返ってきたそうです。

 

配布資料には避難訓練の際の写真がたくさんあり
スクリーニングや体表モニタによる被爆検査等
訓練はつつがなく行われていたようですが
実際の事故時には機材が何百個も必要で
機材が足らないので基準を変えて
検査をしなくてもいいことにしたと

(゜∇゜ ;)エッ!?

機材が足らなくて検査ができないなら、
住民をいち早く安全な場所へ避難させるべきでした。
やるべきことをやらずに
それで良いことにして済まそうとしているのです。

そうして
何も知らなかった多くの人が被爆してしまった。
原爆病の症状を出して亡くなった方も居ます。

井戸川氏は

防災訓練には事故にあったときの対応が示されてあった。
しかしそんなシナリオは無かったとして情報を隠して
総理大臣が独裁状態で支持を出していた。
そしていつのどこの会議風景なのかわからない写真が公に出て
やることをやった風に装っている。
菅総理がいい加減なことをするから裁判になった。と言っていました。

訓練通りの手はずであれば
各町の町長が集められて国や東電の担当者と会議をしていたはずなのです。
それができていたら多くの人を被爆から守れていたはずなのです。
当事者が意思決定の場から除外されて偉い人だけで意思決定し
被害を全部被災者に被せているのです。

井戸川氏はずっと悔しそうに怒っていました。

本当にこれは裁判ものです。

井戸川氏は「一人で戦っていて寂しい」と言っていました。
同じ立場の他の町長も一緒に戦ってほしいのに
なぜこんな国に従ってついていくのか?

これでは事故の収束などあり得ない。と
井戸川氏のパワーポイントは締めくくられました。

井戸川氏の話が終わったあと
会の人から締めくくりの言葉があり、報告集会は幕を閉じました。

 

思ったこと

 

井戸川氏は何度も「嘘はいけない」と言っていました。

どんなに嘘をついても真実は人の体の上に現れて来るのだと思います。
嘘を真実と思い込んでいたら「なんでだろう?」「おかしいな~」というような事ばかりになって
解決策も見つかりませんし当事者はその苦しみを理解されずに普通じゃないことを咎められ苛まれ
見捨てられて孤独の中で亡くなっていきます。
この国では誰もがそういう立場になる可能性があります。
以前このブログに感想を書いた映画「ヒロシマ」でもありましたが
この国の問題解決方法は昔から被害者を切り捨てて忘れ去り「なかったこと」にするのです。

いつまでもこんな事が許されていいはずがないです。

原発事故から10年が経ちました。
国が隠蔽工作などせずに事故収束と原発廃炉に全力をあげていれば
脱原発の技術で日本は世界の最先端になり
国家の生業となる1大産業ができていたと思います。
きちんと向き合えばピンチはチャンスになったのだと思います。
途方もない事から目をそらし逃げるのではなく受け止めて解決に向き合う
そういう勇気が必要です。

井戸川氏は原発事故当時の双葉町町長として責任をずっと感じて
国と東電を相手に勇敢に戦い続けています。

正直言うと私は、この裁判や井戸川氏の存在を知ったのは今年になってからです。
震災から10年、裁判が始まってから5年も経っているのにずっと知りませんでした。
原発事故のこと、被災者のこと、知ることを避けていたと言っても過言じゃないです。
私自身にも日本国中にも問題がたくさんあって身近なことで頭も心も一杯で
気の毒な人が居ると分かっていても構えないという・・・
その事自体が問題であり、自分のことも国のことも深堀りしていけば繋がるのです。
自覚してなくても日本人全員、これから生まれる子まで既に気の毒な人になっています。

大きな問題に対して自分のような小さい存在は何もできないと言いたくなりますが
ほんの少しでも知ろうとして、知ったことを人に知らせること
それをする事が気の毒な人を助けることにも
自分のためにも国のためにもなると思います。
途方もない事から目をそらし逃げるのではなく受け止めて解決に向き合う
勇気を持って救われましょう。

このブログをここまで読んでくださった優しい貴方にお願いします。
井戸川氏の戦いを知って応援して下さい。他の人に伝えていって下さい。
私や貴方が孤独の中で亡くならないようにするために。

 

今回、街宣から裁判の傍聴、報告集会に全部参加できてよかったです。
「井戸川裁判を支える会」の細やかな配慮のおかげで
初めてでも分かりやすく、ちゃんと参加できるようになっていました。
これからも初めての人がどんどん裁判の傍聴に参加してくれたらと願います。

 

井戸川裁判を支える会
http://idogawasupport.sub.jp/

カンパ・入会案内
http://idogawasupport.sub.jp/admission.html

会報誌・井戸川かわら版
(私の漫画が載っています。会員になるとA4サイズ冊子が送付されます。)

http://idogawasupport.sub.jp/kawara.html

井戸川氏の本「なぜわたしは町民を埼玉に避難させたのか」
https://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=88718974

この裁判の争点がわかりやすく書かれた古川弁護士の本
「福島原発、裁かれないでいいのか」
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784022736000

ロンゲラップ島の悲劇について
https://www.asahi.com/articles/ASN894K0ZN7VULOB00V.html

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常夏さわや(tokonatsu sawaya) 1981年神戸市生まれ 現在埼玉県川口市で夫と二人暮らし。  まんが、イラストの受注製作をしています。

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